Love is ID〜鏡の城〜

向日葵が見つめるなかで許されることない恋に堕ちたあの日・・・。この恋の結末を知っていても僕は君しか愛せない。

たどり着いた丘の上は、愛する人が眠る場所。

夏生の死を認めたくなくて俺は、今まで逢いにくることができなかった。


「夏生・・・クロス持ってきたよ。遅くなってごめんな。
 俺は弱い人間で、この手からクロスを離してしまったら
 もう2度と夏生を会えない気がして、ずっと持ってこれへんかったんや
 でもあの手紙を読んで思い出したんだ。どんなにこのクロスを夏生が大切に
 していたか…。もう一度夏生の首にこのクロスをかけてもええか?」
 
夏生の名前が刻まれた石碑にクロスをかける。


「やっぱりこのクロスは、夏生に一番似合う。
 夏生・・・いま俺のこと見てるんやろ?ごめんな全然約束守れてないよな。
 俺は、太陽のように逞しくもなければ、月のように澄み切った輝きもない。
 でもな。俺・・・夏生が愛してくれた渡辺恭一でいたい。これからもずっと
 夏生に愛されていたい。だから輝き続けるよ。いつだって夏生が俺を
 見つめ続けてくれるように・・・。」

石碑にかけられたクロスを優しくはずして、夏生が眠る場所へ小さな穴を掘る。


「ふたりの愛を誓ったクロスだから、誰にもみつからないように・・・
 そして俺の変わりに、永遠に夏生の側へ」


冷たい雪を掻き分けながら、夏生の近くにクロスを埋めた。
「夏生・・・また来るな。
 それまで俺のことを見守ってて、俺…夏生が誇りに思えるような男に
 なって、笑顔で逢いにくるから…それまで待っててな」

『ニャ〜 ニャ〜ァ』

どこからか子猫の泣き声がした。 

あたりを見まわすと

雪の白さに隠れた子猫が俺を見つめて鳴いている。

「お前どうしたんや?お母さんはいないんか?」


『ニャ〜ン』

恐がることなく、俺の足元に擦り寄ってくる

子猫の首には【赤いリボン】

最後の夜、俺と夏生の小指に結ばれた

あの【赤いリボン】が蘇る。


「おいで・・・。お前もひとりなんやろ。」

抱き上げた子猫の身体は冷たくて

あの日の冷たくなった夏生が蘇る。

「寒かったやろ。寂しかったやろ。こうしてたら暖かいからな…」

コートの中にいれて、優しく包み込むとゴロゴロと喉を鳴らしながら

安心しきった瞳で俺を見つめる。

その瞳は、まるで俺といるときの夏生そのものだった。


「夏生…夏生なんか…?」

答えることなく、じっと見つめる子猫の小さな体を抱きしめて俺は呟いた。


「俺と一緒に帰ろう…」




その日の夜、俺は久しぶりに穏やかな気持ちに包まれていた。

夏生がいなくなってから、安心して眠ることができなくなった俺

眠るたびに襲われる孤独感や寂しさ…。

でも今夜は、俺の隣で眠る子猫が柔らかい暖かな温もりで包んでくれている。


「お前暖かいなぁ〜。まるで夏生が側にいるみたいや…」

そっと頭を撫でてやると

嬉しそうに目を細めて俺の手を小さな舌で舐める。


「うひゃひゃひゃ…お前こそばいって(笑)」

夏生がいなくなってから、心の底から笑うことできなくなっていた俺

現実主義な俺が、この小さな子猫を夏生だと思えることが不思議な気がしたけど

そう思わせるものがたしかにあった。

だからいまはこの温もりを感じて、幸せに包まれて眠りたい。

たとえこの夜が幻だとしても…。




翌朝目を覚ますと、ベットには子猫の姿はなく

【赤いリボン】だけが残されていた。

俺は驚くことなく、その残されたリボンを握り締めて

目が覚める前に感じた柔らかな唇の感触と

耳に残る【恭ちゃん愛してる】の囁きを思い出していた。


差し込む光に導かれてベランダに出ると、太陽が眩しく俺を照らした。

眩しすぎるその太陽が、向日葵になって見つめている夏生に思えて

空に向かって、俺は夏生への想いを届ける。


「夏生…最後に会いにきてくれたんやな。ありがとう。
 俺…夏生を愛したことを、そして愛されたことを忘れない。
 ふたりが愛し合った日々は、俺が生きているかぎりこの胸で生き続けるから…

 だから今日から俺は、夏生の眩しさに負けないように前を向いて歩き出すよ。
 忘れるわけじゃない、想い出にしてしまうわけじゃない。
 ただ後ろを振り返ることなく、真っ直ぐに生きたいんだ。
 それが俺にできる、夏生への最後のプレゼントだから・・・」

俺の言葉に太陽が微笑み

【恭ちゃんありがとう】

そう夏生が囁いたような気がした。




〜エピローグ〜



「お疲れ〜」


『おう、お疲れ〜! 今日の仕事もハードやったなぁ〜
 俺さ、これから飯食いにいこうとおもうとるねん。
 恭一も時間あるならいかへんか?』


「ごめん。今日はええわ」


『今日は…って(笑)お前さ俺が誘うときはいつもやんか』


「ちゃうねん。俺も一緒に飯ぐらいいきたいねんで
 でも今日は予定があるんや」


『また仕事ちゃうんか?お前ほんま仕事すきやもんな。
 でもな。たまには気晴らしもせんと、ますますおじいちゃんになるで(笑)』


「誰がおじいちゃんや!だいたいな…」



コンコン


『お疲れ様です。恭一さん、頼まれたもの買ってきましたよ。』


ドアを開けたマネージャーの腕にいっぱいの黄色い花束


『恭一それって…彼女の…』


「ん。今日な夏生に逢いに行くんや」


『そっか、それじゃ俺が断られても仕方ないやんけ(笑)
 それにしても、これだけたくさんあるとキレイやな』


「これってな、一輪でもキレイなんやで」


そういいながら、初めて夏生と会ったときに差し出された一輪の向日葵を思い出して

花束の中から、一輪抜き取り篤に差し出す。


『なんやいきなり…これ俺に??』


「たまには花もええもんやろ!部屋に飾ったらええで(笑)」


『なんか恭一さんからそんな言葉を聞くと、キショいで(笑)』


「おまっ…。まぁええか!今日は恭一さんはそういう気分ってことに
 しといてや。んじゃ、俺そろそろ行くわ」


『おう。気ぃつけてな。そして彼女に恭一は頑張ってますって伝えといてや』


「うひゃひゃひゃゃ。そんないうお前のほうがキショいわ(笑)」


『せっかく人が褒めてやってるのに…ほんま恭一さんは素直やないなぁ〜』


「素直に表現できひんのが俺やからな(笑) じゃあお疲れ〜」


俺は向日葵を抱きしめて、楽屋をあとにした。



緩やかなカープを繰り返し、夏生が眠る場所へと車を走らせる。

助手席に置かれたた向日葵の花束が、太陽のようにそして月ように輝きだし

同じ空昇っても、太陽と月は出会えないと思っていたあの頃を思い出させた。



でも今は違うと思える。

太陽(夏生)が昇っている時間に、月(俺)がこの空の下で輝いていれば

同じ空で二人は会うことができるのだから。


夏生…いま空から俺が笑っているのが見えてる?

俺らしく真っ直ぐに生きてるのが見えてる?

これからも俺は、夏生が愛してくれた「恭一」であり続けるよ。

前だけをみて咲き続ける向日葵に負けないように…

真昼の空でも、輝く月であり続けられるように…



赤いリボンに束ねられた向日葵の花束を手に

俺は笑顔で夏生に向かって囁いた。





「夏生、逢いにきたよ」





ー fin ー

終わってしまいました・・・・・

涙ながらに読んでいながらも、最後は笑顔で読み終えることが出来るステキな作品でした!
愛する人の隣で天に召されるなんて(しかも若くて美しいうちに笑)理想です。

ぶっちゃけ、この作品をここで読むことが出来て良かったです。
ショコラちゃんがここで公開してくれなかったら、はねはきっとこの感動を味わえなかったと思うから。

次回作、楽しみにしていますw

2008.04.04 11:54 URL | はね #- [ 編集 ]













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