Love is ID〜鏡の城〜

向日葵が見つめるなかで許されることない恋に堕ちたあの日・・・。この恋の結末を知っていても僕は君しか愛せない。

第5章 記憶


あなたの瞳に、彼女が映りはじめたのはいつ?

そして、気がついたときには

あなたの心にも住み着いてしまった彼女

私の目の前にいる、あなたの頭の先からつま先まで

彼女のものだと思うだけで

この胸は張り裂けそうになる。


わたしだけを見て、そして愛して

その言葉を飲み込むたびに、私の心にひとつ傷がふえる。

あなたと出逢ったあの日が

ふたりの運命だと信じてはいけませんか?

出会うべくして、出逢ったふたりだと思ってはいけませんか?



【あなただけのひとりになりたい】
第4章 雨 〜後編〜

聞こえてくるのは、窓を打ちつける雨の音と遠雷の音

そして俺と瀬名の吐息だけ・・・

激しい雷の影響で、暗闇に取り残されたふたり

お互いの表情さえもわからない中で、温もりと鼓動だけを感じていた。

ずっと震えていた、瀬名の体がしだいに落ち着きはじめて

少しずつ、暗闇に慣れ始めた俺の目に瀬名が映り

言葉もないまま見つめあい、そして自然に唇が重なった。


小鳥がついばむように、軽く触れ合った唇が

もっと深い場所を求めて、熱いキスへと変わる。

流されそうになる自分を抑えられなくなったとき

体から鈍い振動を感じた。
第3章 雨 〜前編〜


あれから数日が過ぎ、約束の土曜日

会社につくと、愛流からのメールが届いていた。

「いよいよ今日だね。予定は大丈夫?
 駅の近くに美味しいと評判のお店を見つけたので
 そこを予約しました。予約は20時に入れたから
 駅前に遅くても10分前には来てね。
 都合が悪くなったら、早めに連絡を下さい。
 楽しみにしてます。愛流」と書かれていた。

俺はそのメールに

「了解。もしかしたらギリギリになるかもしれへんけど
 なるだけ早く行くようにするから  渡辺」と返信した。

会社の子と、しかも女の子と食事・・・。

自分のことなのに、どこか他人事のように感じてしまう。

もしこれが愛流じゃなかったら、俺は断っていたのか?

突然、湧いてきた疑問に戸惑いながらも

すぐに、俺の心は否定しはじめる。

違う。この感情は恋と呼べるものじゃない。

そうあいつは、ただの友達なんだから・・・。



第2章 傘


『渡辺君、突然で悪いんだけど塚田様から連絡が入って
 新しいサンプルがほしいそうなんだ。いまからすぐに届けてくれないか!』


「いますぐにですか?新しいサンプルの説明も一緒にしてきたほうがいいなら
 その資料とかも用意したいので、少し時間をもらえると助かります。」

『そうだな、折角ならきちんとした説明をしてきてもらうほうがいいし
 一度、塚田様に連絡をいれて、時間の確認をしてくれ』

「わかりました。さっそく連絡をいれてみます」

連絡を入れてみると、幸い急ぎじゃなかったこともあり

商品の説明をする時間も設けてもらうことができた。

俺は作った資料を手に、自分の名前が書かれたボードに

【塚田様14時】と書き込み、急いで会社をでようとしたとき

愛流の声に呼び止められた。


『渡辺君、忘れ物〜』

「忘れ物?なんや?俺さっき確認したけど、全部持ってるで?」

『これ持っていったほうがいいと思って』

差し出されたのは、1本の傘

「なんで傘?こんなに晴れてるし、いらんやろ?」

『今は晴れてても、天気予報で午後から崩れるって言ってたから』

「そっか雨降んのか、大切な資料が濡れるのは嫌だし・・・ほな借りてくわ」

『そうして、折角作った資料濡れると困るからね』

「おん。ありがとうな」


このとき、愛流から傘を借りることがなかったら・・・

君と俺の出会いはなかったと思う。


プロローグ

【雨は好きじゃない】と君は言った。

あの人を思って切り裂かれるほど胸が苦しくなって

心まで雨が降るから・・・嫌い。

悲しげな瞳で、そう呟く君を

彼の事しか見つめてない君を

どうして俺は愛してしまったのだろう?


愛を求めて震える肩を抱きしめたいと思った。

あいつの代わりに、この手でその唇も胸も

柔らかい肌も、その温もりも

この腕で愛したいと思った。


だから俺は・・・あの夜君を抱いた。

窓を打ちつける雨の音が、君とのことを思い出させる。

― 雨は嫌いだ −

【嫉妬】という名の黒い塊が、俺の心を侵食していくから

いまごろ君は、あいつの腕に抱かれて眠り

寂しさを埋めるように、何度も温もりを求める。

そんな君を愛してしまったのは俺・・・

そして、誰も愛せなくなったのも俺・・・

「冷たい男」「愛することを知らない男」

俺に浴びせられる言葉が、いつか君の耳にも届くのだろうか?


【こんな男になったのは、君にせいだ】

そう言ってしまいたくなるほど、君に翻弄され支配されている。

99%の愛があいつのものならば

残りの1%で俺を愛して

誰にも止めることができない、この熱を帯びた欲望の炎を消せるのは

この雨じゃなく、君だけなんだ。